私は箱の中の猫を絶対に見ないようにしていた。
なぜなら見ればそんな残酷な決断はできなかっただろうから・・・・



お巡りさんの話では、箱の中の猫は大人のおとなしいトラ猫だと言っていた。
どこぞの公園で、おとなしいがゆえに、そんなへんなヤツに捕まってしまったのだろう。

そうやって捕えられた猫が、私の知らないところで指導センターに持ち込まれることなどいくらでもある。
その猫とて同じだ。
そんな理屈を頭の中で組み立てていた。
その卑劣な男の執拗な手口を断ち切るために、その猫を犠牲にするしかないと思ったのだ。


しかし・・・やはり理屈では片付けられない・・・
そんなことをしたら、恐らく一生後悔に苛まれることになるだろう・・・


私は頭の中をフル稼働させ、考えたあげくやなぎさんに電話をかけて相談してみた。

やなぎさんに今までの経緯を話すと、やなぎさんはなんの躊躇もなく、

「じゃあ僕がその子を預かるよ」

と言ってくれたのだった・・・・・・。




実際やなぎさんが猫を引き取ってくれたのは、指導センターに行ってからだったので、
結局私はその猫を見ないままでいた。

それよりも私にはやらなければならないことがあった。
事件の再発を防ぐために、猫を置かれた家の前に張り紙を作った。



 ~ここに猫を置いていった方へ~


動物を遺棄することは犯罪です。

あなたがしたことは犯罪なんです。

あの猫はもうここにいません。

あの猫がどうなったか知っていますか?

知りたかったら○○交番へ行って聞いてください。

今後も一切ここに情報を持ってきてもこちらでは何もしません。

そういうことは○○市動物指導センターへ持ち込んでください。



動物指導センター ×××-××××
○○交番 △△線を西に向かって徒歩3分

 




その人は絶対にまた家の前に来るに。
その猫がどうなったか確認に来るに決まっている。

だから脅かしてやるのがいちばんなのだ。
仮に交番に確認に行けば、交番では「処分された」と言うだろう。
もしそういう人がいたら、犯人に間違いないとお巡りさんには言っておいた。


そしてその後、あやしい手紙の存在は私の前からパタッと姿を消したのだった。





私は猫を預かってくれたことで、やなぎさんに感謝しきれなかった。
やなぎさんは隣町に住んでいるので、私はいずれその子に会いに行くと約束し、
「名前も私につけさせてくれ」と頼んでおいた。

お巡りさんは「トラ猫」と言っていたが、やなぎさんの話では「サビの老猫」だということだった。
とてもおとなしい猫で、やなぎさんのところの他の猫たちともなんの問題もなくやっていると言われ、
心の底から安心していた。
その時私のところにはやはりサビ猫のいっちゃん(現在ふくちゃん)がいた。

「いっちゃんと同じ柄かぁ」

私はその子に会うのを心待ちにしていたが、なんやかやと出かけられずに時間が過ぎてしまった。




ある日、会社に電話があった。やなぎさんからだった。


や「あ、けむさん、例のあのサビだけどね」

私「あ~~~すみませんやなぎさん、今週末行こうと思っていたところで・・・」

や「いや、あの子死んだんだよ。」

私「えっ!?


あまりの突然のことに驚いて言葉が続かなかった。
やなぎさんの話しによるとその日の朝、自然死のように亡くなっていたというのだ。


や「今ね、市の焼却場に来ているんだけど、大丈夫、僕らがちゃんと供養しておくから安心して。」

私「・・・・・・・・・・・・・・」

私は仕事中で、すぐに焼却場へ行きたくとも無理だった。



や「それよりも不思議なことに、この猫死後硬直しないんだよ。」

私「(!)そんなことあるんですか?本当に死んでるんですか?」

や「ちゃんとお医者さんに診てもらっているから本当だよ。いや僕らも初めてだよ、
  死後硬直しない猫なんて。








結局私はついぞその猫に会えず終いになってしまった。


それにしても家の前に置かれてわずか20日ほどで死ぬなんて・・・
本当にその子の寿命だったのだろうか。
だとしたらどこぞの野良でいたところをそのへんな男に連れてこられ、
最後の数日をやなぎさんのうちでのんびり過ごせたのなら、、、
それはそれでよかったのかもしれないが。


死後硬直しなかった猫--------
もしかしたら私を試すために神様が送ってよこした猫だったのかもしれない。

だとしたら私のその時の決断を、神様はどう受け取っただろうか。


091203


2009/12







スポンサーサイト


コメント

  1. ばぁば | -

    ケムさん おはよう~❀
    今年もどうぞよろしくね!

    私、ケムさんの判断は正しかったと思います。
    サビの老猫ちゃんは与えられた命を全うしたのです。
    ケムさんのところから指導センターを経てやなぎさん宅で穏やかな最後を迎えることができたのも運命だったのです。

    老猫を持ち込んだり訳の分からない手紙を書いたりした人も、決して猫嫌いではなかったのでしょう。
    放ってはおけないけれどただ手だてが分からない不器用な年配の男性だったのではないでしょうか。
    見て見ぬふりをしないだけ猫に愛情を持っている人だと思うから、きっとケムさんの書いた張り紙を見て、今後は指導センターに手紙を送るようになるのでは?
    ぜひそうなってほしいですね。

    ところでメイサちゃんのその後はどうですか?
    少しずつでも慣れていってほしいですね。

    ( 10:45 )

  2. モコ | -

    ケムさん

    明けましておめでとうございます!
    今年もどうぞ宜しくお願い致します❤

    なんだか、狐に摘まれたような不思議なお話ですね。
    その猫ちゃん。神の使いか・・・。

    死後硬直しないだなんて、ほんと不思議。
    って、ちょびを思い出してしまい堪らず涙・・・。

    こんな私ですが、どうぞ今年も宜しくお願いします^^;

    ( 21:10 )

  3. けむ | -

    Re:

    ばぁば~こちらこそよろしくね。

    ばぁばはえらいなぁ。。。私は全くそんな風に考えられなかったよ。
    やっぱり人には聞いてみるものだ。
    違う視点でその人のこと見られるのだから。
    たぶん私は随分ドライな人間だと思うの。
    ボランティアの仲間から見れば余計ね。
    でもそうやって私も色々学んできてることもあるよ。
    たった一年前のことだけど、あの時は若かったなぁって思うよ。

    あ、メイサちゃんv-12
    信じられないほど慣れてくれません。
    残念ながらあきらめないとならないかもしれないです。泣

    ( 22:52 )

  4. けむ | -

    Re:

    モコちゃん~❤
    あけましておめでとうございます。
    こちらこそ、どうぞよろしく。

    そーなの、私はその猫を見ていないから今でも信じがたいのですが。
    神様のお使いだとしたら、何のために来たのだろうね。

    私は猫自体が神の使いだと思うことがあります。
    私達はいろいろな場面で試されてるのかもしれないですね。

    ( 22:57 )

  5. ちわここ | -

    ケムさん
    明けましておめでとう(遅っ)

    前回といい今回といい出てくる言葉は「切ない」
    老猫ちゃんほんの少しの時間でも
    幸せに暮らせて良かった(T‐T*)

    最近、涙もろくてダメです←歳ですかね(笑)

    ( 09:58 )

  6. ばぁば | -

    ケムさん♪

    ケムさんはドライな人間ではありません。
    自分の時間を可哀想な猫たちのために費やして、
    一生懸命弱く小さな命を救おうと頑張っているじゃないですか!
    本当に本当にあなたは温かい人です。

    たとえボランティアだとしても、ときにはクールにならなければいけない場合もありますよね。
    今回のことは正にその典型的な例だと思います。
    その立場に立たされたケムさんはすごくやりきれない思いをしたでしょう。
    この先ケムさんのところが心ない人によって猫捨て場にならないためにも最善の方法だったんだと思います。

    年末に九州だったかな?
    全部の肉球をそぎ取られた猫が捨てられているのが見つかって、でも治療の甲斐なく死んでしまった悲しいニュースがあったじゃない。
    その近くでは足を折られた子も何匹も見つかってるって…
    名古屋ではマンションの高層から何匹も子猫が落とされる事件もあったし…
    そんなキチガイじみた人間といえないような人たちに比べて、この老猫を置いていった人はまだマトモに思えたの。
    でも突然自宅に訳の分からない手紙を張られたら、まず不信感を持つのは当たり前。
    一度不信感を持ってしまうとなかなか払拭できるものではありません。
    私だってケムさんの立場になれば同じ気持ちになるはずですよ。

    あ、今日レンくんの3種混合ワクチンの接種日なの。
    ところが昨日、右手脇腹のところが皮膚炎を起してハゲてるのを発見!
    今から病院に行ってきます。

    メイサちゃん、保護されるまでよほどひどい目にあったのでしょうか?
    かなりの人間不信になってしまったのね。

    ( 11:01 )

  7. けむ | -

    Re: タイトルなし

    ちわん、あっちでもこっちでもおめでとう(笑)

    その子については、そうやって考えるしかないと思ってます。
    寿命だったんだと。
    ちわん、そーだよ涙もろいよ。
    感じやすいお年頃なのよ(笑)

    ( 13:34 )

  8. けむ | -

    Re: タイトルなし

    ばぁば~~~~

    その九州の話し、知らない~~~~泣。
    やだ~~~~そんなの、そんな事件があったの?
    どうして弱いものいじめをするんだろう、なぜそんな心の人間がいるのだろう、
    本当にやりきれないです。

    捨てるのが人間なら、救うのも人間、
    傷つけるのも人間なら、守ってあげるのも人間しかできない。
    そう思って保護活動をやっています。
    でもこの活動で、嬉しいことより、悲しいことの方が多い気がしてます、、、
    だけどその経験があるから、この先の失敗を最小限にできると思うから、続けていけるんです。

    ばぁば、ありがとうね。私は大丈夫。
    メイサちゃんはダメでも、もう外へは返さないから平気だよ。



    ( 13:50 )

  9. モコ | -

    ばぁばのお話に愕然・・・。
    一体、そんな事をする人は何が目的でするのでしょうか・・・。
    本当によく分からない。

    以前、保護活動をされている方のブログで、
    犬のブリーダーの中には本当に信じられないぐらい酷い人達がいて、
    繁殖させる為だけに、
    酷い環境で餌もろくにやらず、
    うるさいからと声帯をとり、
    走り回らないようにと足を折り、
    ただの金儲けの道具としてしか見ていない。

    その方のところに保護された時の犬達の写真を見た時に、そのガリガリさにも驚きましたが、それよりも生気を失った深く暗い瞳に涙が止まりませんでした。

    ばぁばの言っていた猫ちゃん達も、そのワンちゃん達も、どうか虹の橋で幸せになってもらいたい。
    それと同時に、そんな事をするキチガイにはどうか神の天罰を与えて欲しいと心の底から思います。

    ( 23:54 )

  10. けむ | -

    Re: タイトルなし

    モコちゃんの悲しいお話しを読むのが辛かったです。
    そんな話はいくらでもあって、そして現在も進行形であって、挙句の果てには飼い主から見放され保健所行きになってしまう犬達もいるのですから。
    命あるものをなんだと思ってるのでしょうね。
    痛みも感情もあるのに。

    私もいつも思っています。そんなやつらは地獄に堕ちろと。

    ( 20:30 )

コメントの投稿

(コメントの編集・削除時に必要)
(管理者にだけ表示を許可する)


トラックバック

Trackback URL
Trackbacks


最新記事