カクタさんの奥さんは、同じことを何度も繰り返し質問したり、
すごく子供っぽいものの言い方をするような人だった。


「カクタさん夫婦は心配なところもひとつふたつあるけれど、

 絶対に猫はかわいがってくれると思うよ」



実は最初にエチカさんが心配なところと言った本当の意味は、
カクタさんの奥さんのことではなかった。


カクタさんがエチカさんの保護猫のりんごちゃんを見に来た時、
エチカさんはカクタさんの車に乗せてもらっている。

その時のことを私はエチカさんから聞いていた。



~エチカさんから聞いた話~

その車というのが、中がものすごく散らかっていて、
後部座席にチャイルドシートが置いてあって、

「このチャイルドシートは誰が座るのですか?」と聞くと、

「息子が座る」と言われた

そのチャイルドシートというのが薄汚れてシミだらけで、
チャイルドシートの置いてある窓部分には、
隙間がないほどシールがベタベタ貼ってあった



エチカさんは「それを見て恐くなった」と言っていた。

カクタさんの息子さんとは小学校5年生だった。








エチカさんは車の中の散らかり具合を見て、家の中についても言及すると、
カクタさんの奥さんは「片付けが苦手だ」と答えていたそうなのだ。


「猫は高い所に上がったり、狭いところい入り込んだりしますから、
 散らかっている家の中は猫にとって危険がいっぱいです。
 ちゃんと片付けるようにしてくださいね。」

エチカさんがそう言うと、カクタさんのご主人は、

「そうだよおまえ、片付けような」と奥さんに言い聞かせていたと言う。




私はルカちゃんを連れ、エチカさんと一緒にカクタさんの家を訪ねた。
近所のスーパーの駐車場から電話をすると、ご夫妻で迎えに来てくれて、
奥さんは「わざわざすみませーん」と何度も頭を下げながら嬉しそうに迎えてくれた。


カクタさんの家は一軒家でかなり大きな家だった。

「まだだいぶ散らかってるんですが

カクタさんの旦那様はそう言って恐縮していた。
私は以前ゴミ屋敷のおばあさんの家も見ていたので、
「散らかっているとはどの程度だろう」とかなりひどい状態をイメージしていたが、
家が広いだけに、それほどごちゃごちゃはしていなかった。

(ちょっとホッとする)

ただ以前飼っていたという猫が使っていたトイレは、まだ砂が入ったまま放置されていて、
エチカさんは早速、
「新しい猫が来るのですから、トイレくらいきれにししてください!」と角田似の旦那さんを叱り飛ばし、
旦那さんはあわててトイレを洗いにいった。


私達は小学校5年生の例の息子さんにも会いたかったのだが、息子さんはいなかった。

私たちが訪れたその日は平日の夜8時を回った時刻だったというのに。


「いないって・・・それはどういうことですか?」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・


当初私達が息子さんのことを質問すると、旦那さんは、
「事情があって」という言葉を繰り返していたが、
いよいよここできちんと聞いておかなければならない、

いちばん聞きにくいことをエチカさんが切り出してくれた。



私達が恐れていたのは、


その息子さんが精神障害がある子ではないか、ということ、

そして

猫に対して危害を加える恐れがないか、ということだった。






よく猫をもらうのにあたって、

プライベートな家庭の事情をそこまで話さなければならないのですか

と不満げに言われる人がいる。

誰と誰が猫と一緒に住むのか、誰が世話をするのか、どんな環境で暮らすのか、
そのために私達はできればそこに暮らす家族全員と面会したい、
その中で自然とプライベートなことに質問が及ぶことがある、

たとえそれが家庭の事情でも、言いにくいことでも、
そこで嘘をつく人には猫はあげられない。
家の中にあげてもらず、玄関先で対応されるようなお家はその時点でお断りだ。


お金と愛情をかけた子を無償でその家族に託す、

その子は売り物ではない、

一生愛情を持って育ててくれる約束と引き換えに託すのだ、

そのためにいちばん大事なのは、

里親さんとの信頼関係だ。

その約束が守れるという信頼と引き換えるのだ。





カクタさんの旦那さんは、息子さんのことを話してくれた。
実際本人を見ていない私達は、それが真実なのか嘘なのかはわからない、

でも旦那さんの話が本当であれば、「息子さんが猫に危害をくわえることはない、大丈夫だろう」という結論になった。

私達はカクタさんのご主人の話を信用することにした。

なぜならカクタさんのご主人が正直に話してくれたこと、
そしてご夫妻は本当にいい人達だと思ったからだ。



ルカちゃんを見せるとカクタさん夫婦はルカちゃんを気に入ってくれた。
奥さんは相変わらず、
「この子は何ヶ月だっけ?」とか、
「手術はもうしなくていいんだっけ?」とか、
同じことを何度も繰り返し言っている。

でもルカちゃんを抱っこすると、
嬉しそうに微笑んで、ルカちゃんに頬ずりをしていた。


エチカさんはいつもにまして厳しく、

「今日は猫をこの部屋から出さないでください、
 ほらそこの隅の荷物は猫が昇ったら崩れますよ!
 そっちの部屋に行ったら猫が行方不明になりますからね、
 ここは閉めておいてくださいね!」

と隅々までチェックして激を飛ばしている。


そして最後に、

「おかあさん、専業主婦なんですからこれからもっと家の掃除を一生懸命やってください!
 できますか? 私と約束ですよ!」


と言って、無理矢理奥さんと指きりげんまんしていた。


110410 002 部屋の片隅で丸くなったルカちゃん



ルカちゃんはその日から「お試し飼い」ということにしてもらい、
後日、もういちど私が様子を見に訪れる約束をして、
私達はカクタさんの家をあとにしたのだった。





エチカさん、ありがとう。
私はいつもそこまで言えないんだよな。



2011/4/5




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